校長室ブログ

8/28 久しぶりにプチ史跡巡り(23)です

 40日ぶりの更新です。

 夏休み中はめぼしい学校行事もなく、また私的な理由で今年は春からあまり積極的に歩き回る感じでもなかったので、更新はお休みさせていただきました。

 このブログについては「学校と関係ない話が多い」とのご意見をいただくこともあるのですが、行事や部活の事は他の先生方が書いてくれますし、学校のWebサイトだからといって学校の事ばかりでも面白くないと思うので、このコーナーでは、私が日常の中で興味を持ったことを書かせていただいています。

 さて、そういったわけで久しぶりの史跡巡りはこれ(写真下)です。

 皆さんおなじみの「そごう大宮店」です。注目していただきたいのは最上部の円形の部分、旧「回転展望レストラン」です。「ああ、そういえばそんなのがあったね」と思った方もいると思いますが、ここはいまから20年前までは回転展望式のレストランとして営業していました。

 なんでも書いてあるウィキペディアによると、世界初の回転レストランは1959年にドイツのドルトムントで開業したそうです。その後1960年代~80年代には、世界中のホテルやデパート等に回転展望式のレストランやラウンジが盛んに作られました。日本では「そごう」という会社が、なぜか回転レストランが好きだったようで、大宮店の他にも、柏店、豊田店、奈良店、小倉店に回転レストランを設けていました。このように20世紀の後半に流行した回転レストランですが、現在もちゃんと動いているところは、ほんのわずかなようです。

 さて、この回転レストランですが、私にはかつての20世紀の大衆消費社会の象徴のように思えます。

 回転式レストランの土台になっていることが多いのはデパート(百貨店)ですが、デパートという商業形態は、産業革命と中産階級の発展を受けて19世紀欧米で誕生しました。産業革命以前の社会では工業製品は全て職人の手作りでしたので、きわめて高価でそれを手にすることが出来るのは人口のごく一部の貴族など富裕層だけでした。したがって一般大衆向けの小売業などはほとんど存在しませんでした。ところが、産業革命により工業製品の大量生産が可能になり、またある程度の現金収入を持った中間層の市民が増えてきたことで、一般向けの小売販売が行われるようになり、その集大成としてのデパートが生まれてきたわけです。デパートは、上流階級にあこがれる中間層にとって、ちょっと頑張れば上流階級が手にするものと同じような商品が手に入る夢の国でした。またデパートに併設されたレストランも、日常を離れてちょっと贅沢を楽しもうとする家族の楽園でした。

 風景を楽しみながらゆったりと食事ができる回転展望式のレストランは、そういった大衆消費社会の一つの頂点のような気がします。

 現在、デパート業界はどの会社も非常に経営が苦しいようです。その背景にはネット通販で何でも便利に安く手に入る世の中になったこともあると思います。ですが最大の原因は、格差社会と言われるように、贅沢のできる人たちはデパートではなく、本当の高級店でびっくりするような価格の商品を購入したり食事を楽しんだりする一方で、そうでない人は格安量販店やB級グルメを楽しむようになり、均質な中流の生活がなくなってきたことでしょう。

 私が子供のころは、どこのデパートでも、屋上にちょっとした遊園地や熱帯魚売り場などがあり、その下の高層階にレストランがあるという作りでしたが、今はそういった風景は見なくなりました。デパートの名前はあっても、フロアごとテナントとして貸し出しているモール形式の所も増え、大衆の消費の殿堂としてのデパートは風前の灯です。というよりもはや「大衆」というものが存在していないのかもしれません。